近年、日本の各自動車メーカーから「軽自動車の新型EVを販売する」という情報を耳にする機会も増えましたよね。
車両価格が高く、高級車志向の強いEVは身近に感じないと敬遠されていた方でも「軽自動車のEVが販売される」と聞いて興味を持ち始めた方も多いでしょう。
今回の記事では、日本国内のEV普及の鍵を握ると言われている「軽EV」について、
- 需要の高さ
- 維持費
- 国内主要メーカーが打ち出す車種・戦略の最新情報
などについて解説します。
読み終われば、軽EVの魅力と最新情報を知ることができ、今後の軽EV購入の参考になるので、ぜひ最後までご一読ください。
軽自動車は電気自動車に適している
現在、日本国内で販売されているほとんどの電気自動車は、車両価格がガソリン車と比べても割高となっており、購入を躊躇されている方も多いでしょう。
電気自動車の車両価格が高くなってしまう大きな要因として、電気自動車の核となる部品であるリチウムイオン電池の原価が高いことが挙げられます。
航続距離を長くしようとするほど、リチウムイオン電池の容量を多くする必要性が生じてしまうもの。
ガソリン車の様に500km以上の航続距離を実現するためには、必然的に車両価格が上がってしまいます。
しかし、軽自動車ユーザーは長距離走行ではなく、通勤や街乗りなどの近距離走行に使用される方が多いため、150km程度の航続距離であれば支障がないと想定できます。
航続距離を短くして良いと割り切れば、搭載する電池容量も減らせるため、車両の低価格化を実現可能。
また電池容量が減れば充電時間も短くなるため、軽自動車の売りでもある「手軽さ」を感じることができます。
開発コストの面から考えても、軽自動車は電気自動車に適していると言えるでしょう。
軽電気自動車の維持費
軽自動車は、維持費が安く済む点も魅力のひとつです。
普通車と比較すると、
- 自動車税種別割
- 車検費用
- 燃料費
- 保険料
などが安く抑えられる傾向にありますが、軽EVの場合でもガソリン軽自動車と同様の恩恵を受けられます。
また電気自動車は、
- エコカー減税
- グリーン化特例
などの減税・免税措置が受けられるため、更にコストを抑えることが可能です。
軽電気自動車は高い需要がある
軽規格の中国製電気自動車が大ヒット
EV先進国ともいわれる中国では、国内自動車メーカー「上汽通用五菱」が、軽自動車規格のコンパクトEVの「宏光MINI」を販売。
車両価格は日本円でおよそ60万円前後と、電気自動車とは思えない低価格を実現したことで話題となりました。
高額になりがちな電気自動車の常識を覆した宏光MINIは、中国国内においてテスラを超えるほどの大ヒットを記録し、世界各国でも大きく注目されています。
航続距離は100km前後と短めですが、街乗りやセカンドカーとしての使用を目的としたユーザーにとっては、価格も相まって充分に実用性を感じます。
軽自動車EVの低価格を実現すれば、国内でのEVを普及させる可能性が大いにあると言えるでしょう。
軽電気自動車は商用車との相性がいい
軽EVは商用車との相性が良いとされており、
- 小回りが利き、静音性が高いため閑静な住宅街でも走行しやすい
- 環境に配慮したクリーンカーを採用すれば企業イメージが良くなる
- 充電設備が整えば燃料コストが安く済む
というメリットがあるため、運送会社や郵便局などで積極的に採用しようとする動きが増えています。
佐川急便が軽電気自動車を積極採用
物流大手の佐川急便が2021年4月13日、自社で集配用に使用している軽自動車7200台を全て軽EVにすると発表しました。
使用する車両は佐川急便と日本のEVベンチャー企業「ASF株式会社」と共同開発したEVを採用し、2022年9月頃から納入が始まる予定です。
ASFは自動車の製造工場を持っておらず、中国EVメーカー「広西汽車集団」へ製造を委託します。
EVの主要部品である電池を安く揃えられる中国でEVを製造することで、車両価格を抑えることが可能となります。
航続距離は200km以上になる見込みで、近距離配送が主軸になる軽商用車としては十分に実用的だといえますね。
国内大手メーカー6社の軽電気自動車の展望
日産・三菱
三菱自動車は今年1月14日、「東京オートサロン2022」にて日産自動車と共同開発した新型軽自動車EVのコンセプトカー『K-EVコンセプトXスタイル』を世界初公開しました。
価格は補助金などを活用すれば、実質200万円前後になる見通しで、満充電で走れる距離は170kmほど。
デザインも三菱の軽自動車「ekクロス」とほぼ同様であり、ユーザーが求めている軽自動車のイメージに合わせて製造されていることがわかります。
また、同車を共同で開発した日産は2021年7月に商標登録「SAKURA」を特許庁に申請しました。
このまま車種名になるか分かりませんが、日本の国花である「桜」をイメージさせるネーミングから「日本を代表するEV車を発信していく」という気概を感じ取れますね。
ホンダ
日産・三菱に続いてホンダも2024年、軽自動車規格のEVを発売すると宣言しました。
ホンダは2021年4月23日、三部敏弘氏の社長就任会見の際、「2030年先進国全体でのEV・FCVの販売比率を40%、2040年にはグローバルで100%を目指す」と発表しています。
日本でEVを広めていく上でキーとなるのは「軽自動車」にあると考えており、軽EVの開発に非常に力を入れていることが分かります。
ホンダは軽乗用車販売台数で7年連続首位を獲得しているN-BOXを販売していることもあり、もしN-BOXのEVが販売されることになれば、業界への大きな影響があることが予想できますね。
ダイハツ
ダイハツの奥平社長は2021年12月20日、軽自動車のEVを「2025年までに補助金を活用することで実質100万円台で販売する」と発表しました。
ダイハツは2030年までに、国内で販売する新車を全てハイブリッド車とEVにすること目標にしており、軽EVの普及には100万円台でなければ難しいと述べており、コストを抑えることに関して積極的に動いている模様です。
スズキ
スズキは2025年までに国内での軽自動車EV販売を目標にすると公表し、同時に主力市場のインドでも補助金を活用し、100万円台のEVを投入する方針を出しています。
国民の所得が低いインドでは高価なEVは受け入れられないため、価格を抑えた軽自動車EVの開発に大きく注力しています。
トヨタ
トヨタ自動車は2021年12月23日、一部の法人ユーザーに販売していた軽規格EV「C+pod(シーポッド)」を全国すべてのユーザーに向けて販売を開始しました。
2人乗り使用で最高速度は時速60kmまで、高速道路の利用も不可能と完全に市街地での利用を想定したEVです。
車両価格は170万円前後と比較的手にしやすい価格に設定されており、非常にコンパクトで取り回しやすいデザインと安全性能の高さから、シニア層からも注目を集めています。
まとめ|軽自動車の電気自動車は国内EV普及の鍵を握る
日本国内のEV普及率は、まだまだ低いと言わざるを得ません。
しかし近年、国内の各メーカーは軽EVの低価格を実現し、既存の軽自動車ユーザーのニーズに応えようと様々な動きを見せ始めています。
国内新車販売台数で4割を占め、国民の大衆車となっている軽自動車のEV化が進めば、日本のEV普及は大きく伸びていくでしょう。
軽自動車のEV化は日本の「今後のEV普及の鍵を握る」といっても過言ではないと言えますね。