気候変動問題への対策として、世界中で普及が加速している電気自動車(EV)。
中でも中国国内の電気自動車メーカーは、ベンチャー企業を含めれば300社以上存在し、まさに電気自動車大国となったといえます。
この記事では、世界各国のEVメーカーから注目される中国の主要新興メーカー3社を紹介し、日本で中国EV車が普及していないその理由についても解説させて頂きます。
読み終えれば、あなたも中国の電気自動車市場について詳しくなり、日本の自動車産業が持つ課題を知ることができます、ぜひ参考にしてみてください。
中国の電気自動車業界の動向
自動車業界に大きな変革が起きている昨今、中国の新興自動車メーカーが大きな躍進を続けていることを皆さんはご存知でしょうか。
自動車販売台数が世界最大をほこる中国は、2014年ごろから国策として電気自動車の普及を推進する政策を打ち出しました。
販売台数は年々加速的に増え続け、現在その普及率は他国を圧するほど先行しています。
特に今年、2021年の生産台数の伸び率は凄まじく、年間で300万台弱のEV車が中国で生産されました。
日本の〝全自動車販売台数〟が年間でおよそ500万台ほどと言われており、中国ではその約6割程度のEV車を年間で生産していると分かれば、規模の大きさが伝わるはず。
中国の電気自動車普及は今後も拡大され、2030年ごろには国内乗用車の40%が電気自動車になっていくと言われています。
中国の新興電気自動車メーカー3社
数多く存在する中国の新興電気自動車メーカーの中から、近年特に存在感を高めている
1.上海蔚来汽車(ニーオ)
2.小鵬汽車(シャオペン)
3.理想汽車(リ・オート)
上記3社、それぞれが持つ特徴についてご紹介します。
上海蔚来汽車(ニーオ)
2014年に創業。中国の新興EV車メーカーの中でも特に高い人気を誇り、その実力と知名度から「中国版テスラ」などと呼ばれたりもしています。
従来のEVメーカーが重視してこなかった電気自動車のデザイン性とスピードという点にいち早く着目し、今までの電気自動車に対するイメージを覆すようなスピーディーで高級感のあるデザインモデルは、中国国内で大きな話題を呼びました。
またニーオには「NIO Service」と呼ばれる高級会員制サービスプランも用意されています。
加入すればクルマメンテナンスだけでなく、運転代行、洗車サービス、更には家までスタッフが来て、クルマの充電を代行してくれるなど、日本では考えられないほどの手厚いアフターサービスを受けられるのです。
高級路線を前面に打ち出したニーオは中国の富裕層に受け、各国からも大きく注目されています。
小鵬汽車(シャオペン)
2014年に設立。高級車市場を中心に発展し、業績を伸ばし続けているスタートアップ企業です。
先進技術を多く採用し、特に自動運転支援機能の開発にも積極的で、今年1月にはNavigation Guided Pilot(NGP)という独自に開発した自動運転支援システムを今後搭載していくという発表をするなど、革新的な技術開発に定評があります。
近日では、「無人自動運転ロボットタクシー」事業にも着手することを表明し、今後の動向がとても気になるメーカーです。
理想汽車(リ・オート)
2015年にEVメーカーとして設立。初モデルであるミドルサイズSUV「li ONE」を2019年ごろに量産し、現在もこの1台のみを生産しています。
「li ONE」はプラグインハイブリッド(PHEV)車であるため純粋なEV車ではありませんが、航続距離は1,000キロ以上を実現し、SUVに特化した重厚なデザインは、ライバル企業との差別化に成功しています。
日本では中国の電気自動車に乗れない
デザインも優秀で先進技術をふんだんに搭載し、魅力に溢れた中国のEV車。
自分も乗ってみたいと興味が湧いた方も多いでしょう。
しかし1958年に制定された58協定(国連の車両等の相互承認協定)に加盟していない中国が、日本へ並行輸入を行うことは現状難しいと言わざるを得ません。
中国EV車の並行輸入が難しい理由について詳しく知りたい方は、こちらの記事が参考になるのでご覧ください。
中国の電気自動車が日本で普及しない理由3つ
中国の電気自動車市場が急成長を遂げているにも関わらず、日本国内で中国のクルマを見かけることはほとんどありません。
中国のEV車が日本で普及されない理由として大きく3つの課題があげられます。
- 中国のEV車以外の技術力が発展途上
- 中国車の日本ナンバー登録が非常に厳しい
- 日本国内のEV車普及率が低い
それぞれの理由について解説します。
EV車以外の技術力が発展途上
中国の電気自動車市場が世界的に見ても非常に高い水準であることはお判りいただけたと思いますが、実はガソリン車の製造技術に関しては他国と比べるとかなり遅れをとっています。
そのため、EV車を主力商品としている中国自動車メーカーを日本に持ち込んだとしても、ガソリン車をメインに販売している日本車メーカーに対抗することは非常に難しく、中国側としては、日本国内にディーラーを置くメリットが少ないです。
中国車の日本ナンバー登録は非常に厳しい
輸入車が日本の公道を走行するには当然、日本のナンバー登録が必要になります。
「日本では中国の電気自動車に乗れない」の項で記載した通り、輸入車であっても〝58協定〟と呼ばれる協定に加入している国のクルマであれば、安全性を確保しているとみなされるため、比較的容易に登録出来ます。
しかし、58協定に加入していない中国の場合、日本国内の基準に適合しているかを判断する厳しい試験や、安全性を証明する書類を提出する必要があり、時間と費用も大きくかかってしまいます。
日本国内のEV車普及率が低い
世界各国のメーカーが自動車の電動化へ向けて活発になっている中、日本はハイブリットカーが市場の中心となっており、電気自動車の普及率はまだ1%程度しかありません。
国内の充電ステーション設置台数も十分とは言えず、高額な車両価格、航続距離の短さへのへの懸念など、電気自動車に対する課題の多い日本では、輸入EV車を普及するにはハードルが高いのが現状です。
まとめ| 各国のEV化への動きを後押しする中国と、日本が持つ課題
世界に先駆けて電気自動車の普及を進めてきた中国は、今後も大きく発展していくことが予想され、各国への普及拡大へ向けての期待が高まっています。
日本ではEV車の選択肢も少なく、充電インフラが不足していることから普及に遅れをとっていることがわかりました。
しかし、日本の各メーカーも新型電気自動車を相次いで投入する予定であり、徐々にEV化に向けての動きが活発になってきています。
日本の電気自動車を発展させるために必要な課題は2つ。
- 集合住宅のような環境でも当たり前に充電出来る充電設備の普及。
- ハイブリッドカー時代を大きく切り開いたトヨタ「プリウス」を彷彿とさせる革新的な電気自動車の出現。
日本の電気自動車市場を加速するためには、この二つをクリアすることが必要な条件だと言えます。
電気自動車の発展に躍進する中国と苦戦する日本。
まさに世界中の自動車産業市場が揺れ動く大きな変遷期において、急速度で進化していく中国メーカーには今後も注目です。