今、海外で急速に普及している車のシェアサービス、ライドシェア。日本でも注目されてはいるものの法的規制により、まだ完全に普及していません。今回は、ライドシェアのメリット・デメリット、カーシェアリングとの違い、日本で展開しているおすすめアプリについてご紹介します。
ライドシェアとは?
ライドシェアは配車の専門会社が提供するアプリで、利用者と自家用車のドライバーをマッチングするサービスです。別名ライドシェアリングという名称も。
海外では、日本でもおなじみの宅配サービスUberが2009年からライドシェアを展開しています。
海外のライドシェアには、2つのタイプがあります。
詳しくは下記のとおりです。
- ドライバー自身が所有する自家用車に乗客を乗せ、料金を得る有償タイプ
- 乗客がドライバーの自家用車に相乗りし、運転にかかったガソリン代などの費用をドライバーとシェアするタイプ
ライドシェアは普段使わずに空いている座席を有効に使えたり、交通費を抑えられたりするため、海外では広く利用されています。
カーシェアリングとの違い
ライドシェアとカーシェアリングの違いがわからない方も、いるのではないでしょうか?
ライドシェアは、配車専門業者が提供するアプリを使い、利用したい人とドライバーを結びつけるサービスです。
一方のカーシェアリングは、車を利用したいドライバーに車の貸出しをするサービスです。
カーシェアリングには、車の所有者である企業が利用者に車を提供するBtoC型、個人間で車をシェアするCtoC型があります。
ライドシェアの市場規模と普及率
ライドシェアの市場規模と普及率は、どのようになっているのでしょうか。
ここでは、海外と日本の状況を見ていきます。
海外
海外のライドシェアの市場規模は拡大しています。
なんといっても市場規模の拡大に貢献しているのは、アメリカのUberです。
現在、Uber のライドシェアはアメリカ国内だけでなく、78の国や地域で利用を拡大しています。
他の国に目を向けると、中国ではアリババやテンセントなどが出資するディディチューシンが有名です。
東南アジアではシンガポールのGrab、インドでは01aなどの企業も参入。
フランスではコストシェア型ライドシェアを提供する、BlaBlaCarなどの企業も参入しています。
イギリスのある調査会社の報告によると、ライドシェアを専門とする企業が得る手数料収入は、2017年には110億ドルだったのに対して、2022年には190億ドルの拡大が予想されています。
タクシー会社などは市場の拡大に対して顧客を奪われる懸念から、ライドシェアに反発する流れがあるものの、世界的に法整備を進めて対処しようとする動きがみられます。
日本 規制緩和が必要
ライドシェアは海外では普及していますが、日本ではどうなのでしょうか。
結論からいうと、有償のライドシェアは日本ではそれほど普及していません。
自家用車を運転して料金を取るライドシェアは、そもそも日本では道路運送法によって白タク行為として禁止されている事情があるためです。
日本でもライドシェアを合法的に認めようという流れはあるのですが、タクシー業界やバス業界などの大きな反発を受け、なかなか進みませんでした。
そんななか、2015年10月に開かれた国家戦略特区諮問会議にて安倍総理が、「過疎地の観光客の交通手段に自動車を活用する」と発言。
この発言を受け、ライドシェアの規制緩和へむけた動きがスタートすることになりました。
2016年に制定した国家戦略特区法の改正です。
法案では、NPO法人や市町村など営利目的ではない運用で、過疎地域・観光客に限定した自家用車のライドシェアを可能にすると定められました。
日本の特区制度で実験が行われた地域
国家戦略特区法に基づき、福岡県福岡市・京都府京丹後市・北海道中頓別町などの地域では、まず実証実験という形でのライドシェアが始まりました。
実証実験の結果、有償でのライドシェアを行うことになった地域も。
京都府京丹後市では2016年に「ささえ合い交通」という名称で、NPO法人とUberが連携して有償のサービスを開始しました。
ボランティアとして登録するドライバーと住民・観光客をUberアプリでマッチングし、目的地に運送するというものです。
北海道中頓別町では3年の実証実験のあと、2019年に「なかとんべつライドシェア」という名称で有償のサービスを開始しました。
スマホのUberアプリか電話にて予約し、ドライバーに目的地まで乗せていってもらうという仕組みです。
2018年には兵庫県養父市で、地元のタクシー会社3社・観光協会などで作られたNPO法人が運営する「やぶくる」のサービスがスタート。
タクシー会社が短距離運送できない、山間地域に限定して運送を行っています。
これらのサービスがスタートしたことにより、経済団体からもライドシェアを広く推進する提言はされているのですが、まだ、限られた地域での運用となっています。
ライドシェアにはメリットとデメリットがある?
世界的に普及しているライドシェアですが、運用する上でメリットとデメリットがあります。
メリット・デメリットをそれぞれ見ていきましょう。
メリット
ライドシェアのメリットを利用者側からみると、タクシーより安い価格で乗車できるというところです。
お金を直接払わずアプリ上で決済できるので、料金を取られすぎるなどのトラブルもありません。
ドライバー側のメリットとしては、自分の車を有効活用して好きな時間に稼ぐことができるところです。
デメリット
ライドシェアのデメリットは、タクシードライバーのように約1ヶ月みっちりと研修を受けるわけではないので、ドライバーによる運転技術やサービスにバラツキが出るところです。
事件や事故など安全面も心配なところ。
実際に海外では、ドライバーによる飲酒事故、乗客への暴行事件や殺人事件が何例か報告されています。
ドライバー側からすると、低賃金労働であったり、保険・保証が十分にされていなかったりといった問題があります。
ライドシェアの種類
ライドシェアには、さまざまな種類があります。
ここでは、4種類の代表的なライドシェアを紹介します。
カープール型
ドライバーが、行き先が同じ乗客を目的地まで乗せる相乗り型サービス。アメリカでは、通勤時によく利用されている一般的な型です。乗客は、スマホアプリで乗車の直前に予約できるのが特徴。
ドライバーはガソリン代など運転にかかった費用を受け取れますが、乗車運賃を受けとることはできません。
カジュアルカープール型
カープール型とヒッチハイクを掛け合わせた、相乗り型サービスです。ヒッチハイクのように、面識がない者同士がひとつの車に乗るのが特徴。
朝通勤中のドライバーが専用乗り場に並ぶ人を乗せ、目的地まで一緒に移動するといった流れです。
バンプール型
大型のバンを利用して、7~15人程度の人を乗せるミニバスのような相乗り型サービスです。乗客は、ドライバーと費用負担をするのが特徴です。
企業や行政の補助で、負担を減らして運用するケースもあります。
TNCサービス型
2012年にサンフランシスコで始まり、急速に広まるサービスです。サービス提供会社は、運営するプラットフォーム上で一般ドライバーと乗客の相乗りを仲介。
マッチング後、一般のドライバーが自家用車を運転し、乗客を乗せ目的地まで移動します。予約は携帯のアプリで行い、乗車後に支払う仕組みです。
料金は地域・車種により距離や時間が定められているので、乗車前の料金を確認しておくことができるのがポイント。
タクシーのように、「乗っているうちに運賃が上昇して困った」というような心配もありません。
ただ、乗車が込み入っている時間帯には料金が上がるので、混んでいる時間は避けるなど注意が必要です。
相乗り型タクシーサービス
事前にスマホアプリで申し込んだ旅行客同士をマッチングし、移動するタクシーの相乗りサービスです。日本では、2021年の11月から運用が開始されました。
料金は、旅行客同士が乗車距離に応じて割り勘で払うイメージです。
例えば25kmの距離を乗客Aが15km、乗客Bが10km乗った場合、タクシー運賃が10,000円とすると、
- 乗客Aの運賃は、6,000円(10,000円×15km/25kmの計算)
- 乗客Bの運賃は、4,000円(10,000円×10km/25kmの計算)
を支払う計算です。
日本で展開しているおすすめライドシェアサービス・アプリをピックアップ!
日本で展開しているライドシェアサービス・アプリをひとつ取り上げます。ライドシェアサービスを利用する際の参考にしてみてくださいね。
notteco
2007年にスタートした、会員数40,000人を誇る日本最大の相乗りマッチングサービスです。
旅行・スポーツ観戦などで移動する際に、現地までの車の移動を安く済ませたい利用者と、ガソリン代・高速代を節約したいドライバーを結びつけます。
- ガソリン代や高速代を割り勘で安く済ませられる
- 新幹線や高速バスと比べて、柔軟なスケジュールで移動できる
- 同じ趣味の者同士が相乗りすることで、楽しい時間をすごせる
などのメリットがあります。
移動を便利にする日本のライドシェアリングの普及に期待
世界的に普及しているライドシェアリング。好きな時に好きな場所へ移動できるところは、大変な魅力です。
しかし、便利な半面、海外では事故や事件などの心配もあるのも事実。
日本では、nottecoのような相乗りマッチングサービスは広まっているものの、海外のようなライドシェアは普及していないのが現状です。
昨年2021年にUber やディディチューシンが、タクシー会社との連携による相乗り型タクシーサービスをスタートしました。
こうしたサービスと日本の相乗りマッチングサービスが発展して、日本型のライドシェアリングとして普及するようになれば良いですね。