旅先でのトラブル対策に、モバイルバッテリーを持っていきたいという人は多いのではないでしょうか。しかし、飛行機に持ち込むことができるモバイルバッテリーには制限があるのです。今回はモバイルバッテリーを飛行機に持ち込むことについて、ご説明します。
モバイルバッテリーは預入禁止!
手荷物は、事前に預け入れるか機内に持ち込むことで、旅先へ持っていくことができます。しかし、預け入れができるものと機内持ち込みできるものには、それぞれ制限がかけられているのです。
例えば、カッターナイフなど、凶器になりえるものは手荷物として持ち込むことができません。反対に、モバイルバッテリーは預け入れすることが航空法で禁止されています。
過去には航空機火災の原因になった例も
モバイルバッテリーが預け入れ禁止となっているのは、過去に航空機火災に繋がった事件があるからです。
2010年に起きた貨物機の墜落事故において、貨物室に積まれていたリチウムイオン電池が発火し、緊急着陸を試みたものの叶わず、機長、副操縦士の2名が亡くなっています。
リチウムイオン電池は、モバイルバッテリーなどにも使われている充電可能な電池であり、減圧によって内部構造に異常が生じて膨張、爆発、発火に至ったと考えられています。
こうした経緯から、異常に気付きにくく初期消火が困難な貨物室への預け入れは、航空機火災が万が一発生した際の危険性を高めてしまうため、現在では禁止されているのです。
万が一預け入れてしまった場合にはすぐ連絡!
もし間違って預け入れを行ってしまった場合は、必ず航空会社のフロントに報告しましょう。
出発前であれば、乗客の荷物の中から自分の荷物を探し出し、返却してくれます。何らかの注意は受けることになると思いますが、上空で火災が発生して大勢の死傷者を出すよりは遥かにマシです。
また、もし預け入れ荷物の中にモバイルバッテリーが入っていることが航空会社のチェックの中で発覚した場合は、勝手にモバイルバッテリーを処分されたり、厳重注意の上で搭乗拒否に至ったりするケースもあるようです。
預け入れる荷物側に間違えてモバイルバッテリーを入れていないか、念入りに確認しながらパッキングを行うようにしましょう。そのうえで、もし間違えてしまった場合には、気付いた段階で速やかに報告を行ってください。
手荷物で持ち込める容量にも限度がある
モバイルバッテリーの預け入れは禁止されていますが、持ち込みにも制限がかかっています。これは預け入れのとき同様、万が一モバイルバッテリーが爆破、炎上した際に対処ができる規模に限界があるからです。
持ち込みの制限容量は航空会社や便によって異なる
持ち込みできるモバイルバッテリーの容量は、航空会社や便の種類によって異なります。一般的に国際線は国内線よりも基準が厳しくなりやすく、国外の運営会社のほうが国内大手2社よりも基準が厳しいです。
モバイルバッテリーを持ち込めるかどうかの評価については、ワット時定格量(Wh)で規定されています。
これは、モバイルバッテリーに記載されている定格定量(mAh)の数字と定格電圧(V)の数字を掛け合わせ、1,000で割ったものです。
例えば、20,000mAh・5Vのモバイルバッテリーであれば、100Whと計算できます。
国内線
『JAL』、『ANA』、『Peach』、『Jetstar』は100Wh以下については制限なし、100~160Whのものは合計2個までという規定があります。国内各社とも、160Whを超える大型のモバイルバッテリーについては、機内持ち込みも禁止となっているのです。
国際線
国際線でも、『JAL』、『ANA』などの国内各航空会社では、国内線と同様の持ち込み制限がかけられています。
ただし、国際線においては経由地や到着地の現地法が適用されることもありますので、便によってはより厳しい持ち込み制限が掛けられる場合もあるでしょう。
搭乗前、予約時などの段階で、航空会社に確認を取って、どれくらいのモバイルバッテリーであれば持ち込み可能かは確認しておくことをおすすめします。
より厳しい制限を付けている航空会社も
モバイルバッテリーの機内持ち込みに関する制限は、各社によって定められているため基準が異なります。
例えば、インドネシアを拠点とするガルーダ・インドネシア航空は、インドネシア運輸省の規定に基づき、原則100Wh以下のモバイルバッテリーしか持ち込むことができません。
100~160Whのものについては航空会社の了解を得たうえで持ち込み可能としていますが、どのような基準で持ち込みが許可されるかは不明です。
また、一時期バッテリーの発火や爆発といった不良が複数報告されたギャラクシー製品に関しても、持ち込み禁止となっている航空会社があった例もあります。
規制条件などはこうしたトラブルの起こる時期によっても変化している場合がありますので、特に国際線を使う場合は、一度航空会社に確認の連絡を取ってみてください。
容量をオーバーしていた場合は?
もし手荷物でモバイルバッテリーの容量がオーバーしていた場合は、カッターナイフなどの機内持ち込み禁止品と同様に没収、空港における廃棄処分となります。
モバイルバッテリーは決して安価なものではありませんので、没収されるのは痛い出費となってしまうでしょう。事前の確認を強くおすすめします。
実際に、モバイルバッテリーのワット時定格量を計算されることまでは、ほとんどないでしょう。しかしもし問題に気付いていながら搭乗し、トラブルが起きてしまった場合、航空法の規定に則り、50万円以下の罰金となる可能性があります。
また、その航空会社を二度と利用できなくなるかもしれません。それだけではなく、最悪の場合は、自分を含め多くの乗員乗客の命を犠牲にすることも考えられます。
どう計算しても容量をオーバーしてしまう場合は、素直にモバイルバッテリーを容量の小さいものに買い替える、または持っていくのを諦めるなどの対応が必要になるでしょう。
手荷物にしていて火災の恐れはないのか?
荷物として預け入れるのは危険で、手荷物として持っていくのは安全なのか、という疑問がある方もいるかもしれません。
もちろん、手荷物で持っていったとしても危険がゼロとは限りませんが、預入荷物にするよりは遥かに安全だと言えます。
理由のひとつは、気圧と気温の違いです。
手荷物が置かれるエリアは、乗客が座っている空間のすぐ近くです。そのため、気圧、気温ともに、人間が無理なく生活できる程度に調整されています。
気圧は標高2,000m程度の山と同じくらいで、気温も24度程度に設定されているのです。
一方貨物室は、ペットが預けられていない場合、4度くらいまで下がることもあります。気圧についても、基本的には同程度の0.8気圧ほどに調整されているようですが、それより下がっている可能性もあるでしょう。
気圧、気温ともにより過酷な環境になりやすい貨物室よりは、手荷物として持ち込んだほうがモバイルバッテリーにとっては格段に安全な空間となるのです。
また、万が一発火してしまった場合、目の届かない貨物室にあると初期消火が遅れて全焼する恐れがあります。
しかし客室で発火した場合には、初期対応が可能になり、大惨事だけは免れられるという面もあるのです。
もちろん、経年劣化の激しいモバイルバッテリーの場合は、手荷物として持ち込んだとしても、発火・爆発などのリスクが高まることは理解しておく必要があるでしょう。
手持ちのモバイルバッテリーが持ち込めない……そんなときは
容量の都合でモバイルバッテリーを飛行機に持ち込めないという方には、現地でモバイルバッテリーをレンタルする、という方法をおすすめします。
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モバイルバッテリーは間違っても預け入れないこと!
モバイルバッテリーを飛行機に預け入れすることは、避けてください。
見つかった場合は空港係員によって没収される可能性が高いですし、もし見つからずにフライトになったとして、それが発火原因になってしまうかもしれないという危険があることを理解しましょう。
手荷物で持っていけるモバイルバッテリーの容量、大きさには制限がありますので、もしこれらの制限に引っかかるようであれば、現地でモバイルバッテリーのレンタルサービスを活用してみるのもいい選択です。